おしっこトラブルについて

昼間のおもらしは3タイプ

日付:2019年04月03日

1.昼間のおもらしの3つのタイプ

こどものお漏らしは、年齢や症状などにより3つの原因に分類されます。

  1. おしっこを出す、ためるなどの機能の発達が遅れている。
  2. 膀胱や尿道、腎臓の構造に先天的(生まれながら)に異常がある。
  3. 背骨の神経(脊髄)や脳に先天的(生まれながら)に障害がある。

このうち、「おしっこを出す、貯めるなどの機能の発達が遅れている」が最も多い原因で、昭和大学藤が丘病院小児科を受診されるお子さんの90%以上を占めます。

生まれつき異常がある場合は新生児や乳児期に病気が見つかりますが、「おしっこを出す、おしっこをためる機能の発達が遅れている」場合はトイレトレーニング終了後にはじめて症状がでるので、見逃される割合が高くなります。

また、こどもの尿モレについて、小児科医や泌尿器科医の多くは、この病気についてあまり詳しくないので、適切な診断やアドバイスを受けられない可能性があります。

いわゆる専門家と言われるドクターは、日本全体でも数十名程度しかいないのが現状です。

2.おしっこの我慢が出来ないタイプ(切迫型)

おしっこがしたいと思ったがトイレに間に合わない、あわててトイレにかけこむが、すでにに漏らしてしまっている、一日に何回も尿漏れがある、おしっこしたばかりなのにすぐまたトイレに飛び込むなどが切迫型の症状の特徴です。

これは膀胱の機能が不安定で、おしっこをためている間に膀胱をリラックスしきれないことにより起こります。

おしっこを出す時は全部出し切れることが多いですが、慌てていたり、トイレから急い出てきたりすると膀胱の中におしっこを残してしまう(残尿といいます)ことがあります。

残尿があると、お漏らしの臭いがきつく、パンツやズボンの臭いから周囲が気づいてしまいます。

実際例)6歳の男の子で、毎日ズボンに大きなしみを作るほどの昼間のおもらしが続いていることを心配されて病院にいらっしゃいました。

お話をうかがうと、オムツがとれた時期も3歳以降と若干遅く、トイレトレーニングがほぼ終わった頃からおもらしが始まっていました。また、夜もほぼ毎日おねしょをしているためオムツをはいて寝ています。

8歳のお兄ちゃんがいますが、お兄ちゃんは今まで一回もお漏らしをしたことがないそうです。ご本人は、あまりお漏らしのことを気にしておらず、周りにおしっこのニオイがするほど濡れても気にせず遊び続けてしまいます。

おもらしをしてしまう理由は、遊びに夢中になっているとおしっこに行く事をわすれてしまう、突然おしっこにいきたくなってしまうが、近くにトイレがないとお漏らしをしてしまうそうです。

お漏らしの原因を探るため、基本検査を行って、日常生活を少しだけ変えてもらうことに同意してもらいました。

尿検査や血液検査では特に異常がなく、また膀胱や腎臓の形や機能も正常で、切迫型尿失禁症と診断されました。

膀胱を安定させるお薬(抗コリン剤)を1日2回飲んでもらい、骨盤運動やバイオフィードバック療法も併用し,さらに普段の生活についてアドバイスを行ったところ、お漏らしの無い日が徐々に出てきて、約2ヶ月で週に1〜2回に減り、お漏らしをしてもズボンまではしみない程度になりました。

日常生活のアドバイスもしっかり守ってくれるお子さんで、最終的には治療開始6ヶ月頃には完全におもらしが無くなり、ご本人の表情もとても晴れ晴れとなりました。

治ってから改めてお話を伺うと、本当はおもらしのことをとても気にしていたこと、友達にからかわれないかを心配していたと話してくれました。

また,努力しても,自分では少量の尿漏れをどうしても止めることができなかったことも分かりました。治癒後は,ご両親もお子様を安心して外出させることが出来るようになったと大変喜ばれていました。

3.おしっこが途中で止まってしまうタイプ(排尿中断型)

おしっこを出している最中におしっこの流れが止まってしまう、最初に少し出たかと思うと、残りはちょろちょろと少量になってしまう、最初から勢いがなく、徐々におしっこが止まってしまうなどが排尿中断型の特徴です

これは膀胱の出口で尿の漏れを防いでいる括約筋という筋肉が上手に働かないために起きます。

おしっこを出す場合は括約筋をゆるみますが、おしっこの途中で括約筋を緊張させてしまうと尿が止まってしまいます。このため排尿は出たり止まったりして、時間がかかるだけでなく、しばしばおしっこが全部出きらないでために、膀胱の中におしっこが残ってしまいます。

長い時間の残尿により、ニオイのきついおもらしもをする、おしっこが出しづらいなども、排尿中断型の症状の特徴です。また尿の通り道(尿道)の病気では後部尿道弁といって生まれつき尿道の一部が狭い場合に同様の症状が起こる事があります。

(実際例)8歳の女の子。幼稚園の時からほぼ毎日パンツを濡らし、小学校入学後も改善しないこと、おもらしの頻度がだんだん増えてきていることを心配されて病院にいらっしゃいました。

お話をうかがうと、オムツをしていたころから、兄弟に比べておしっこが出る勢いが弱いこと、また最初は勢いよく出るおしっこが徐々に弱くなり、最後はポタポタと落ちくるようになることがわかりました。おねしょはなく、兄弟にも同じようなお漏らしをする子はいないようでした。

ご本人は、お漏らしの意識はなく、気がつくとパンツが濡れているとのことでした。また、おしっこをしてから、すぐにおしっこにいきたくなったりすることがたびたびあったそうです。

基本検査では特に異常はありませんでしたが、お腹のエコー検査で約50cc程度の残尿があり、その後の膀胱造影検査で排尿中断型と診断しました。

日常生活の改善を行うとともに、おしっこを出しやするお薬を飲み始めたところ、おもらしは徐々に減少して,おしっこを出す勢いがよくなり,約3ヶ月後にはおもらしが全く無くなりました。

後でご本人から、知らないうちにお漏らしをしてしまうこと、残尿のためにすぐにおしっこに行きたくなることを、周りに理解してもらえずとても辛かったことを話してくれました。

ご両親もお漏らしの原因がわかり、それ以降お子さんに優しく接してあがられたこと、改善が目に見えて進んだことをとても喜んでいました。

4.おしっこの回数が極端に少ないタイプ(尿回数減少型)

幼稚園から小学生の1日のおっしこの回数は、朝起きてからから寝るまでの間に約6回(朝、午前中、昼、午後、夕方、寝る前)程度出ることが普通です。

しかし,まれに1日に2〜3回程度しかおしっこに行かないお子さんがいます。おしっこが貯まった感じが分かっている場合と、感じてない場合があり、膀胱の大きさは平均的なお子さんの約3〜4倍に増加していることがあります

膀胱が極端に大きくなっていたり、腎臓や尿管の構造に異常があって、おっしこを全部出せずに残ってしまう場合は尿路感染や腎臓の機能が低下する危険性が高くなります。

このタイプの尿漏れは,超音波検査などで初めて発見されることが多いです。

(実際例)5歳の男の子です。トイレトレーニング開始したころより、1日のおしっこの回数が1〜2回と極端に少ないことに気がつかれていました。

日によっては1日1回しか出ない時もあり、排尿を促しても上手く出せないことが続き,お子さんも非常に内向的になってしまい,心理的な影響も出始めたため病院に受診されました。

お話をうかがうと、自分からトイレに行きたいと言うことはなく、お母様に促されてトイレに行っていること、トイレに座ってもなかなか出ないため途中で嫌になってしまうことが分かりました。本人はおしっこが貯まっていることの実感がなく、おしっこを出そうと意識しても、出る時と出ない時があることでした。

尿検査や血液検査などの基本検査では異常がありませんでしたが、お腹の超音波検査で巨大な膀胱と左右の尿管の拡張があり、膀胱造影検査を行ったところ膀胱尿管逆流症(二次性,両側Ⅲ度)が見つかりました。

軽度の膀胱炎も起していたため、抗生物質を飲み始め、診断翌月に逆流を防止する手術を行いました。手術後は膀胱を安定するお薬も併用し、徐々に症状が改善し、自分でおトイレにも行けるようになり、約5ヶ月程でおしっこの回数も1日4〜6回と正常に戻り,尿漏れも改善しました。

最初は,ご両親とも手術を受けることを大変心配されていましたが,手術が無事に終わり,症状が目に見えて改善したことより,もっと早く専門のドクターを受診して診断してもらい,手術を受けていれば良かったと話されていました。

ドクタープロフィール

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池田裕一
(教授/昭和大学藤が丘病院 小児科)

3000人以上のおしっこトラブルを抱えた子供達を治療し、20年以上大学病院で子供のおしっこトラブルに関連した診断と治療の開発に情熱を捧げてきた小児科医の目から、正しく偏りなくお届けします。