おしっこトラブルについて

大人の夜尿症について(治療の必要性)

日付:2019年04月18日

1.高校生以上の夜尿症の頻度について

高校生や大学生になっても夜尿が続いている場合は,成人型夜尿症(大人の夜尿症)とよばれます成人の夜尿症の患者さんは100から200人に1人と考えられていますが,日本を含めて海外でも研究が進んでいないため正確な頻度はわかっていません。

大人の夜尿症の患者さんは、自分で病院に行くことも少なく、周囲に言いづらい病気のため、実際はもっと多いと考えています。

小さい時から夜尿が続いていて,治療をせずに高校生や大学生まで経過してしまうと,夜間尿意で目が覚めてもトイレに行けなかったり,体を起こしてトイレに行くのが面倒に感じたりして夜尿がいつまでも続いてしまいます。

また,年齢を上がるにつれて,夜尿が治らないことにあきらめて、水分制限などの生活改善にも消極的になり,また勉強やバイトなどが忙しくなることで病院に行く時間がなくなり,治療を中断してしまう方がとても多い傾向があります。

中学生以上になってから夜尿の治療を開始する方には,成人型夜尿症への移行の可能性をお話しして、日常生活の注意点を良く説明するようにしています。

中学生のお子さまは,尿意を感じたらトイレに必ず行くこと,また排尿後に気づいた場合は,パンツやおむつを自分で取り替えること,濡れてしまったパンツやシーツはなるべく自分で洗濯することを約束してもらいます。これは,お子さまの怠惰による夜尿をなくすのが目的です。

次に,本人と治癒までの期間を決めて実行に移すように約束してもらいます。それには,日々の対策や治療,夜尿の状況をご本人が日誌にまとめて,自分で失敗を振り返りながら,改善していくこと大切だと考えています。

高校生以上の患者さまは、ご本人に病院を受診してもらい、いつまでに治すか? どのような治療をするか?などについて治療計画を一緒に立てていきます。小学生から夜尿が続いている場合も,ご本人のやる気があれば,完治できることも少なくありません。

さらに適切なアドバイスが,一気に治癒を早めることも良く経験します。

高校生まで夜尿がみられる場合は,1日でも早く専門の医療機関に受診して,日常生活対策と各種の治療を開始することが何よりも大切です。一方で、今まで夜尿がなかった方が、中学校高学年や高校生になって突然夜尿が出現した場合は、なんらかの原因がみられます。

精神的なストレスや肉体的な疲労はもちろんのこと、バセドウ病や糖尿病、腎臓病、ホルモン異常などの各種疾病を否定する必要がありますので、必ず医療機関を受診してください。

夜尿が大人まで持続してしまうと,周囲の理解を得ることが難しくなり,社会人になって社内研修が始まったり,結婚や恋人などが出来たときに大きな障害になります。そうならないように,1日も早い対策と治療が望まれます。

2.高校生、成人の具体的な夜尿症治療

高校生以上の大人の夜尿症治療は、子どもの夜尿症の治療と若干異なります。大人の夜尿症では、何らかの病気が合併していることが多いので、治療前に合併症の有無について必ず検査を行います。夜尿症を引き起こす病気として代表的なものは以下のものです。

  1. 糖尿病や.甲状腺機能亢進症(バセドウ病)
  2. 睡眠時無呼吸発作
  3. 過活動膀胱や排尿機能障害
  4. 睡眠障害(睡眠不足、概日リズム障害)

まずは、これらの病気が無いことを血液検査や超音波検査などで確認して、それから本格的な治療に移ります。

治療法は大きく3つに分けられます。夜間の尿量が多いタイプは抗利尿ホルモン製剤(ミニリンメルト)が使用され、膀胱が小さいタイプには抗コリン薬(ベシケアやネオキシテープなど)を使用します。

夜尿症の原因に睡眠障害が疑われる場合は、家庭で測定できる医療用の睡眠脳波検査機器(スリープスコープ)を貸し出して、睡眠状態を詳細に調べるようにしています。昼寝の時も失敗してしまうタイプや長時間睡眠が必要なタイプには睡眠リズムを改善するようなお薬、メラトニン拮抗剤(ロゼレム)や漢方薬(抑肝散や加味逍遥散など)を使用します。一つのお薬だけ効果がある人は限られるため、患者さんの夜尿のタイプに合わせて、いくつかのお薬を組み合わせて治療します。

おねしょで夜に起きられないタイプの患者さんも多く、その場合は薬物療法とアラーム療法の併用を行います。今までの経験では、2つの治療の組み合わせが大人の夜尿症に最も効果が高いことが分かってきました。

一般的に高校生以上の夜尿症は治癒までに時間がかかるので、成人の夜尿症に詳しい、信頼できるお医者さんと一緒に根気よく自分に合ったお薬を見つけて治療していきましょう。治療を続けていく内に、夜尿が少なくなっていく印象を必ず持てるようになります。

昭和大学北部病院尿トラブル外来は小児を専門にしているため、高校生以上の夜尿症は診察できません。

大人の夜尿症の患者さんは決して少なくなく、毎月1名以上はクリニックに訪れていて、20歳以上であっても80%以上の患者さんは夜尿が治っています。特に最近発売されたβ3受容体拮抗剤(ベタニス)は大変効果的で非常によ良い治療結果をだしています。

診察を希望される患者さまは成人泌尿器科に直接ご連絡ください。

ドクタープロフィール

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池田裕一
(教授/昭和大学藤が丘病院 小児科)

3000人以上のおしっこトラブルを抱えた子供達を治療し、20年以上大学病院で子供のおしっこトラブルに関連した診断と治療の開発に情熱を捧げてきた小児科医の目から、正しく偏りなくお届けします。