おしっこトラブルについて

お泊り対策(小児科専門医、教授による最高の対応法)

日付:2019年04月18日

1.お泊りで悩んでいる子どもの数は?

私の子どもの頃(30年以上前ですね)の宿泊行事といえば5、6年生でキャンプや修学旅行で1〜2泊旅行というのが主流でした。

しかし、現在では、幼稚園の体験宿泊やスポーツクラブやサークルなどのお泊り行事、小学校高学年では数日間に及ぶ宿泊体験など、おねしょのお子さまをお持ちの保護者の悩みは以前よりもはるかに増えていると考えられます。

幼稚園や学校の保健の先生に伺った学年別のおねしょ頻度は1-2年生で15%程度、3-4年生で10%程度、5-6年生で5%程度といわれています。すなわち、小学校高学年でも1クラスに1-2人程度いることがわかります。

小学校高学年では「夜尿をしている子どもなんていない!」、と思っているご家族も多いようですが、積極的に申告しないのだけで実際は結構多いのです。

学校や養護の先生は、おねしょの状況を良くご存知ですから、宿泊で心配な場合は遠慮なさらずおねしょの相談なさると良いと思います。

2.宿泊のどのくらい前から治療すれば良いか?

おねしょはすぐに治そうとしてもすぐには治りません。また、どんなにお薬を組み合わせても、飲んですぐに治るという治療法もありません。また、100%効くという薬もありません。

このため、夜尿症を診断し、効果が期待できる薬の選択を行い、夜尿がみられる時間帯などを把握するのに少なくとも3ヶ月前(なるべく6ヶ月以上前)に受診することをお勧めします。

治療にかける時間が短いと、お子さま個人個人にあった治療薬の選択や組み合わせが出来ないばかりか、実際のお泊まり対処法やアドバイスも難しいです。

しかし、毎日毎日のおねしょでも、6ヶ月以上前に受診していただければ、大抵は短期の宿泊体験には間に合わせる事が出来るのです。宿泊行事の前は、本人のやる気もとても大切なファクターとなるので、ご家族と本人、ドクターとで宿泊の計画を立てて、一緒に乗り切れるように相談していきましょう。

3.具体的な対策について(ご家族で出来ること)

まずは、ご家族で出来る対策から考えていきましょう。一般に宿泊行事中は、昼間の運動量が多い、夕食の時間が早い、過剰な水分や糖分の摂取もしない、起床が早いなど、いつもにも増して規則正しい生活になるので、おねしょをする頻度はご家庭で生活する時よりもずっと少なくなります。

このため、おねしょが朝方で、おねしょの頻度の少ない場合は、早朝に起床する事、また友達が起きる前にトイレに行く事である程度防ぐことが出来ます。さらに先生や友達に知られないように宿泊を乗り切るためには以下の方法があります。

対策1 夕食後のおやつやジュースは避けて、コップ一杯程度のお水や麦茶で我慢する。また脱水にならないように、朝やお昼にたっぷりと水分を摂取しましょう。

対策2 バイブレーション付きの目覚まし時計や携帯電話を持参して、友達が起きる前(午前5時頃)にセットしておき、トイレに行ってパンツを履き替えましょう。

対策3 尿もれパット(20〜100mL)をパンツに貼付けたり、介護用のパット付きパンツを持参するか、パンツに大きめなパットなどを縫い付けて,多少の尿漏れに対応できるようにしましょう。

対策4 あらかじめおねしょアラームなどにより排尿時間を確認しておき、携帯電話のバイブレーションなどで、排尿予定時間前に起こすようにしましょう。

対策5 宿泊のスケジュールが確認できたら、宿泊当日と同じスケジュールで1日過ごしてみて、おねしょが出るか確認しましょう。宿泊行事では夕食が早いことも多く、そのためおねしょしないで成功するお子さんも多くみられます。週末や休日に、宿泊行事の夕食時間に合わせてご飯を済ませると、意外とおねしょしないで乗り切れるかもしれません。

さらに、おねしょに詳しいドクターや夜尿症の専門医を受診して、適切なアドバイスとお薬をもらう方法が一番確実で宿泊が可能になる近道です。

実際の診療ではお子さまの個人個人の特性に合った方法やさらに細かいお泊り対策などを教えてもらえますので、是非お子さまと一緒に受診してみましょう。

4.宿泊行事に向けた治療法(お薬でおねしょを一時的に止めること)

お薬は、短期間に効果をだすために、一時的にいくつかのお薬を同時に服用して頂く場合があります。また、お薬の治療を継続して受けている場合は、宿泊期間中も中断することなく続けて服用してください。治療を一時中断して参加すると、夜尿の時間帯がずれて、失敗する可能性が高くなります。

おねしょのお薬は短期間(直射日光は避けてください)であれば、持ち歩いても心配ありません。また、飲む量と副作用防止については,お子さまと付き添いの先生などに十分話してください。

さらに、一般対策編で記したようにおねしょをしてしまう時間を確認する事は、本人に排尿時間を知らせる上でも、先生に起してもらう上でも重要な情報ですので、夜尿アラームや夜尿日記を使っておんしょの時間帯を確認することもおすすめします。

まずは、専門の医師がいる医療機関を受診して、お子さまに一番合ったお薬を実際に使ってみることが大切です

最後に、おねしょをせずに、宿泊行事を終えることは、お子さまにとってかならず大きな自信となります。また、ご家族の方にとっても、宿泊行事を無事終了してきたお子さまは、一段と成長し、たのもしく見えるに違いありません。

おねしょを怖がらず、是非宿泊体験に参加させてあげてください。がんばりたいというお子さんの気持ちは、きっとアドバイスを素直に受け入れ、びっくりする成果をみせてくれると思います。

必要以上におねしょを心配する事なく、信頼できるドクターと一緒に、宿泊行事を無事に乗り切れるように、しっかりした準備と手はずを整えてあげることが、夜尿症のお子さまをもった親としての大切な役割だと考えています。

ドクタープロフィール

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池田裕一
(教授/昭和大学藤が丘病院 小児科)

3000人以上のおしっこトラブルを抱えた子供達を治療し、20年以上大学病院で子供のおしっこトラブルに関連した診断と治療の開発に情熱を捧げてきた小児科医の目から、正しく偏りなくお届けします。