おもらしについて
日中のおもらしの治療法
1.小児科専門医・教授がすすめる治療法
(1)膀胱(排尿筋)の収縮を抑制するお薬
抗コリン薬(ベシケアやバップフォー、ポラキスなど)
おしっこをためられない,トイレをがまんすることができない,トイレに間に合わないなどの症状が強い場合に使用します。
このお薬は膀胱に直接働いて膀胱をリラックスさせ、不必要な収縮を抑制します。それにより膀胱にためられるおしっこの量が増えるとともに、トイレの間隔が延長し、お漏らしや尿漏れの頻度が減少していきます。
子どもには副作用が少ないですが,腹痛やお腹のはり、のどの渇きを訴えることがまれにあります。また便秘の子どもでは、便秘を悪化させることがありますので、便秘薬など排便を促すお薬と併用したり、飲む水の量を調節したりします。
最近、抗コリン薬の新たな薬(β3作動薬:べオーバ)が難治性の過活動膀胱の子どもに使用されつつあります。
さらに、膀胱の出口部を閉める働きのあるαブロッカー(エブランチルやミニプレス)などを併用する場合があります。最近では内服薬だけでなく、貼り薬(ネオキシテープなど)などの全く新しいタイプの抗コリン薬の登場し、難治性の尿失禁症に効果をあげています。
(2)膀胱出口部の抵抗を抑えるお薬
交感神経抑制薬(ミニプレス・エブランチル)
おしっこが出しにくかったり、途中で中断したり、おしっこが膀胱にたくさん残ってしまう症状がみられるときは、膀胱の出口が緊張している可能性があります。
膀胱からの出口に分布している神経は交感神経といわれ、この神経を抑制することで、おしっこが勢い良く、スムースに出るようになります。一方で交感神経抑制薬は血圧を下げる効果があるため、最初は少量からはじめ、体の状態や服用後の血圧を確認しながら徐々に増量して使用します。さらに,膀胱の収縮を促す目的で、コリンエステラーゼ阻害薬などを併用する場合があります。
(3)膀胱炎を抑えるお薬
抗生物質(ケフラール、バクタ)
おしっこが出る時に違和感があったり、痛みを伴う場合に使用する事があります。
特におしっこが膀胱に残りやすいお子さんでは、膀胱炎を繰り返している場合があり、その際は尿検査で白血球の増加や細菌が検出されます。検出された細菌に効く抗菌薬を短期間投与する場合と、少量の抗菌薬を一日一回もしくは一日おきに一回長期的に服用するような投与をおこなう場合があります。おしっこが出る出口(尿道)の炎症のときにも使用されます。
その他、便秘を治すお薬(モビコールや酸化マグネシウム)、低周波電気刺激療法、はり治療,ボツリヌス注入などの手術療法なども用いられています。
2.日中のおもらしの漢方薬
おもらしの治療法の一つとして漢方治療があります。漢方薬は、一般に病院から処方されるお薬(西洋薬)に比較して副作用が少ない傾向があります。
漢方薬は病気を治すというよりは、体のバランスを整え、元の健康な体に戻す働きがあるといわれています。そのため、効果がはっかりと感じにくく、効果発現まで時間がかかります。
一方で漢方治療の効果が現れやすい体質のお子さんも多くいます。病院から処方される薬の副作用が心配な方や、今まで漢方薬が体質に合っているお子さんには漢方治療をお勧めします。
東洋医学の概念には、「気・血・水(き・けつ・すい)」というものがあります。「気」は生命エネルギー、「血」は血液とそのはたらき、「水」は血液以外の水分と考えられています。
頻尿や尿漏れなどの排尿に関するトラブルは、この3要素のうちの「水」に異常をきたす「水毒・水滞」によって生じる症状です。さらに、こうした原因を作り出すのが、水の状態を調整している五臓六腑、「腎(じん)」です。腎といっても、西洋医学でいうところの腎臓というひとつの臓器だけを指すのではなく、排尿・排泄、水分代謝、ホルモンバランス、記憶力などを総合したはたらきを表します。
東洋医学の概念では腎の機能が衰える「腎虚(じんきょ)」という状態になると、「水」に関する異常が起こってくるわけですが、その一つの症状が排尿のトラブルです。 また、寒くなるとトイレが近くなるように、こうした排尿トラブルの根底には「冷え」があると捉えています。
漢方の治療では、こうした腎虚、水毒・水滞、お血など排尿のトラブルの背景にある原因を探り、正常にして、頻尿・尿漏れを改善していくことを目的にします。
子供のおもらしの治療に用いられる漢方薬には,六味丸や補中益気湯,小建中湯などがあります。この中でも,六味丸や小建中湯は,西洋医学的なアプローチによっても改善しない過敏性膀胱に効果があることが確認されています。
さらに、ADHDや自閉スペクトラム症などの発達障害のお子さんには六味丸、八味地黄丸が効果があります。お子さんの体質などを考慮して最適な治療法を探していくのも治癒に向けた大切な治療のひとつです。