相談室(Q&A)

尿のおもらし の相談
ASD特性を持つ小学1年生、どうしてもトイレに行ってくれません

日付:2023年07月09日

Q:質問

息子は年中の時にASDの診断を受けました。
ASDの特性のせいか、保育園でトイトレの際も「みんなと一緒にトイレに行く」という行動ができず、トイトレに時間がかかっており、未だに完全にトイレの自立ができていません。
これまでの背景として、トイトレに熱心な幼稚園に通っており、自立ができないまま年少になりましたが、パンツで過ごす方針だったので、1日に何度も失敗し、何度も着替える生活をしていました。最初は、不快感を感じれば自らトイレに行くようになるだろうと先生方は考えていたようですが、失敗した後も着替えることを嫌がり、癇癪を起こすということが続きました。また、先生がトイレへの声かけをしても「でない」と言い、その後漏らす→着替えをうながす→嫌がる→機嫌が悪くなるという負の連鎖が続いてしまい、先生方も悩まれていました。(その頃は家でも同じ状態でした)感覚過敏はないので、単にトイレが本当に嫌いなのだと思います。
そんな中でも、正面から「トイレに誘う」のではなく、興味のある話をして機嫌良く会話しながらトイレに連れて行くという方法で徐々に行けるようになりました。ただ、これができるようになるまでには息子と先生の間で信頼関係が構築されないと出来ないので慣れた先生にしか対応ができなかったようです。そんなこんなで少しずつ幼稚園でもできるようになったのですが、自主的に行くことまではできず、定期的に先生が声かけをして、行く・行かないは自分で判断するスタイルで年長の3学期にはほぼお漏らしなしで過ごせるようになりました。そして家では、自主的に行けるようになりました。
しかし、小学校入学後は、また振り出しに戻ってしまっています。支援級を選択したので先生からこまめにトイレへの声かけをしてもらっていますが、トイレまで行くものの「出ない」の一点張りでパンツを下ろすことはせず、帰宅して家でトイレにダッシュで向かう日々を過ごしています。学校で尿意を感じた時は、自分でトイレに行けず、何度かお漏らしをしています。
元々、家以外の場所では、ギリギリにならないとトイレに行こうとしないので、学校で声をかけられてもギリギリにはなっていないため「でない」という答えになっているようです。(家族で外出する時はモジモジするので見てわかるため、声かけにより漏れることはありません)
この状態では毎日の事なので困るのはもちろん、ギリギリまで我慢することを学校でしていると授業中は余計に自ら行きにくいので失敗が増えてしまうので、定期的に行くようにしてほしいのですが、元々こだわりの強い性格とあって、ギリギリになるまでパンツは脱がず、こちらで下ろそうとしても頑なに拒むので苦労しています。
本人にも尋ねたのですが、学校のトイレで出せないのは「まだ新しい環境だから」と言っています。
また、放課後デイを利用する日では、(滞在時間が長くなるのもあり)毎日のようにお漏らしをしており、オムツを着用しないと利用はできないと言われてしまい(もちろん本人は嫌がるので、結果利用出来ない)とても困っています。放課後デイでは、熱心にトイレに誘うことや、トイレに息子の好きなキャラクターの絵を貼るなど工夫はされていますが、幼稚園初期と同じように、誘う→でない→もらす→着替えない、または指示が聞こえないふりをしている、という悪循環に陥っているようです。また、送迎の車内でも息子用の防水シートがあるのに意図的にどかしてしまうなど問題行動もあるようです。
以前、小児科医にも相談しましたが、場所によってできる、できない、があるのは身体的な問題ではないので精神的な問題だろうと言われました。
恐らくですが、元々ASDの特性上、困ったことを言語化(身体的表現も含めて)するのが苦手なのに加え、トイレ問題は長年の失敗が蓄積されているので、苦手なものから避ける(不適切な)行動をしているのかな、と感じています。
以前に息子の性格診断をした時に「感覚回避」の傾向があると言われました。身体的な感覚過敏はないですが、緊張や不安が強いので、注目される場面や緊張する場面になると不適切な行動がしばしば発生しているので、放課後デイでの不適切な行動はこの特性なのかな、と感じました。
長文になりましたが、このような状態なので、まずは、学校や放課後デイでトイレに行けるようになってほしいのですが、どうすればいいでしょうか?
特性の問題が強いので解決に時間がかかりそうな気もしますが、夏休み前に放課後デイが使えないという緊急事態なので、いい方法があれば教えて欲しいです。

A:池田先生の回答

ご質問ありがとうございます。
息子さんの特性もあり、トイレ誘導にはさぞお困りのことと思います。
当院では息子さんと同様のトイレの悩みを抱えて通院している患者様を何名か治療しております。
ASD特性の新規の場所への不安、予知不安でしょうか、家庭や慣れている場所以外での排尿には抵抗感が出るのは当然のこととはいえ、医療者側としても適切な対応が難しいです。
同様の悩みで受診中の数名のお子様は、①トイレに一緒に行ってくれる共通の友人を持つ、②放課後デーなど一定の時間帯はお母様がトイレに付きそう、③診断書などを発行して放課後デーなでも対応を依頼するなどしています。内服薬では抗コリン薬やβ3受容体作動薬が効果な場合があります。デバイス療法では、ユリンスコープなどのアラーム機器の装着、DFreeと腕時計型アラームの併用などで対応している患者様もいます。
ASD特性が100名いれば、100通りのオーダーメードの対処法がありますし、お子様の発達年齢によって対応や治療が変わってくるので、一度専門医に相談に行かれると良いと思います。